スピード撤退から見る大原孝治の判断力

大原孝治の経営者としての実力を知るエピソードの一つに、ドン・キホーテ神保町靖国通り店のスピード撤退があります。

普通であれば成功をしたエピソードからその凄さがわかるわけですが、大原社長の場合にはその逆で失敗をしたにもかかわらずダメージはゼロで済ませるところにあります。ドン・キホーテ神保町靖国通り店は開店からわずか8ヶ月の閉店と、結果だけを見れば大失敗です。更に8ヶ月で閉店をしたのは手続き上の問題であり、彼が撤退を決意したのはオープンからたった2週間という早さで、これは並の経営者ではできるものではありません。ここまで早く撤退を決めると最初の目論見が甘かったのではないかと責任を糾弾されたり、もう少し続ければ上向くのではないかと考えて決断をくだすのは難しいものです。結果は多くの場合、傷口を広げて終わってしまうため駄目だと思ったときには早めに撤退をしなければなりません。彼はそれを確実に実行できる経営者の一人であり、ドン・キホーテ自体の方針もあって積極展開、駄目ならすぐに撤退を繰り返して成長をすることに成功をしてきました。理屈としては非常に合理的ではありますが、実際に実行をするとなると躊躇してしまうものだけに、大原孝治の経営判断力が光るエピソードです。彼からすれば撤退をすることになったのが失敗ではなく、本当の失敗は進退の判断を躊躇してしまって決断を下すのが遅れてしまうことこそが、失敗であると理解しているのです。